小・中・高における国語授業の改革 文学作品・説明的文章を読む方法 -構成・構造、形象・論理、吟味・批評- の追究 「読み」の授業研究会

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読み研はどういう研究会か

 

「読み」の授業研究会
代表  阿部 昇(秋田大学)


 「読み」の授業研究会(読み研)は、1986年に結成された国語科教育の研究会です。
 今まで「国語の教え方は、国語の教師の数だけある」と言われてきました。考えてみれば、プロの仕事で担当する人によって、その方法が全く違うということは異常なことです。医師によって治療法が全く違っていたら、私たちは安心して医師の治療を受けられません。しかし、国語科教育の世界では、教師によって教え方が全く違うことを今まであまり問題にしてきませんでした。
 そのため、結果として一人一人の教師の熱意と努力にもかかわらず、確かで質の高い国語力をすべての子どもに身につけさせることが十分にできていませんでした。すべての子どもたちに確かな国語の力を身につけさせることができていなかったということは、生きる力としての、権利としての国語の力をすべての国民に保証できていなかったということでもあります。
 読み研は、そういった状況を克服し、子どもたちすべてに深く豊かな国語の力を確実に身につけさせるための方法を、体系的にそして具体的に追究してきました。特に「読むこと」の指導を中心とした研究ですが、「読むこと」とのかかわりの中で必然的に「書くこと」「話すこと・聞くこと」の指導との関わりも研究対象となってきます。事実、これまで読み研では国語科教育の在り方全般への問題提起を行ってきました。
 間もなく読み研創立25周年を迎えます。この四半世紀の読み研の多様な研究活動に、全国の多くの先生方、研究者の方々が参加してくださいました。そして、温かい励まし、厳しい指摘、そして厚い期待をいただいてきました。
 これからも読み研は、国語科教育の世界に新しい問題提起を行っていきます。是非、読み研の研究活動にご参加ください。


(1)読み研の研究活動

 読み研の全国規模の研究会としては、「夏の大会」と「冬の研究会」があります。夏の大会は、東京や大阪を中心に年一回開催されます。そこでは、それまでの研究成果にもとづく分科会、模擬授業、講座、そして講演等が行われます。毎年200〜300人の先生方においでいただいています。冬の研究会は、主に東京で年一回開催されます。そこでは、夏の大会での成果をより理論的に追究することが中心となります。もちろん模擬授業や講演も行われます。冬の研究会は毎年100名前後の先生方においでいただいています。
 また、小学校部会、中学校部会、高等学校部会が、それぞれ1〜2年に一回開催されます。そこでは、小中高それぞれの代表的な教材を選定し、その検討を通して小中高の特性を意識した指導法の追究が行われます。九州、四国、関西などにおける地方研究会も開催されます。そして、日常の研究活動は、全国各地にある読み研サークルで行われます。
 研究活動は、年一回発行の『国語授業の改革』および『研究紀要』でも展開されています。『国語授業の改革』は学文社から発刊されています。これまで――
  「国語科新教材のポイント発問」
  「国語科の教科内容をデザインする」
  「国語科小学校・中学校 新教材の徹底研究と授業づくり」
  「PISA型「読解力」を超える国語授業の新展開」
  「新学習指導要領をみすえた新しい国語授業の提案」
  「『アクティブ・ラーニング』を生かしたあたらしい「読み」の授業」
  「国語の授業で『主体的・対話的で深い学び』をどう実現するか」
  
――などの特集を組み、国語科教育界に問題提起をしてきました。『研究紀要』でも、新しい問題提起、論争が展開されてきました。
 全国の第一線で活躍されている多くの研究者の方々に、それらの本に寄稿していただきました。
 柴田義松氏(東京大学名誉教授)、西郷竹彦氏(文芸研会長)、渋谷孝氏(宮城教育大学名誉教授)、小田迪夫氏(大阪教育大学名誉教授)、宇佐美寛氏(千葉大学名誉教授)、鈴木康之氏(大東文化大学名誉教授)、望月善次氏(岩手大学)、豊田ひさき氏(名古屋大学)、竹内常一氏(國學院大學)、里見実氏(國學院大學)、足立悦男氏(島根大学)、小森陽一氏(東京大学)、大内善一氏(茨城大学)、鶴田清司氏(都留文科大学)、高木まさき氏(横浜国立大学)、西林克彦氏(宮城教育大学)、須貝千里氏(山梨大学)、府川源一郎氏(横浜国立大学)、田中実氏(都留文科大学)はじめ多くの研究者の方々です。


(2)読み研の5つの研究課題

 読み研では、おおよそ次のような研究を進めています。

1.「読むこと」に関する教科内容の研究―体系化と系統化
 「読むこと」に関する国語の力の具体的解明です。とりわけ文学作品や説明的文章の「読み方」に関する体系的な研究を進めてきました。1900年に「国語」という教科が成立して以来、ずっと曖昧なままに放置されてきた問題に体系的・具体的に応えようという研究です。
 また、それにもとづく系統化についても追究しています。小学校6年間、中学校3年間、高等学校3年間の国語科の教科内容の系統化も現在進行形です。

2.「読むこと」に関する指導過程の研究
 豊かに深く読む力を子どもたちに確かに身につけさせるためには、どういう指導の手順・方法が有効であるかということを追究してきました。たとえば――
 物語・小説の「構造よみ」
       「形象よみ」
       「吟味よみ」
 説明的文集の「構造よみ」
       「論理よみ」
       「吟味よみ」
――といった指導過程を提案しています。

3.確かな国語の力を身につけさせるための授業方法の研究
 有効な指導過程であっても一時間一時間の授業における発問や助言、評価などの質が高くなければ、すべての子どもに国語の力を保証できません。また、グループや学級全体での話し合いや意見交換、討論を展開させる学習集団の指導が不十分であっても、授業の質の向上は望めません。発問・助言・評価等の「指導言」についての研究、そして「学習集団」指導についての研究を中心とした臨床性の高い研究です。
2017告示の学習指導要領で示された「主体的・対話的で深い学び」に応える研究でもあります。

4.小学校・中学校・高等学校の「読むこと」に関する教材についての研究
 鋭く豊かな教材研究ができなければ、国語の力を子どもたちに身につけさせることはできません。それも経験や勘ではなく、誰でもが確実に質の高い教材研究を行っていける確かな方法を研究しています。

5.新しい教育課題に応える研究
 OECDのPISA(学習到達度調査)「読解力」に関する研究、全国学力・学習状況調査の特に「B問題」に関する研究、NIEやメディアリテラシーの研究、討論・ディベート指導の研究、読解指導と読書指導との統一的指導の在り方、「読むこと」と「書くこと」の関連指導研究など、様々な課題に挑戦し成果を上げています。


(3)「タコツボ」からの脱却──研究会での開かれた論争

 読み研の研究活動は常に熱気にあふれています。既に紹介した夏の大会、冬の研究会等では、質の高い意見のぶつかり合い、熱のこもった討論、時には厳しい相互批判もあります。しかし、一方では、初めて読み研に参加された先生でも、気軽に質問をしたり意見を述べたり討論に参加したりしやすい自由な雰囲気もあります。
 また、常に具体的な教科内容、指導方法、教材研究を求め合います。抽象論や特殊な専門用語で煙に巻くような論説・論議は、読み研の最も嫌うところです。そのため、読み研の研究会に参加された先生方、講師の方々から常に高い評価をいただいています。 
 これまで国語科教育の世界では、研究会や学会相互の共同研究がほとんど行われてきませんでした。それを克服していくことも、読み研の大きなテーマの一つです。文芸教育研究協議会(文芸研)との合同研究を何度か行ってきました。文芸研会長の西郷竹彦氏と読み研事務局長の阿部昇との論争も、そこでは当然のことのように展開されます。児童言語研究会との合同研究会も実施してきました。日本文学協会国語教育部会の須貝千里氏(山梨大学)、田中実氏(都留文科大学)、府川源一郎氏(横浜国立大学)には、講師として夏の大会、冬の研究会においでいただいています。
 また、平岡敏夫氏(筑波大学名誉教授・元県立群馬女子大学学長)、外山滋比古氏(お茶の水女子大学名誉教授)、小海永二氏(横浜国立大学名誉教授)、柴田義松氏(東京大学名誉教授)、西郷竹彦氏(文芸研会長)、宇佐美寛氏(千葉大学名誉教授)、野口芳宏氏(元北海道教育大学)、高橋俊三氏(元群馬大学)、豊田ひさき氏(名古屋大学)、小森陽一氏(東京大学)、鶴田清司氏(都留文科大学)、高木まさき氏(横浜国立大学)など、多くの先生方に講師としておいでいただき、研究の内実を高めています。


(4)多彩な出版活動

 これまで読み研では、多彩な出版活動を繰り広げ、国語科教育の世界に問題提起をしてきました。
 『国語教育評論』全12巻(明治図書)、『教材研究の定説化シリーズ』(明治図書)全30巻が完結しています。『教材研究の定説化シリーズ』は、「おおきなかぶ」「ごんぎつね」「一つの花」「少年の日の思い出」「オツベルと象」「故郷」「羅生門」「舞姫」などの各教材をそれぞれほぼ一冊を使って徹底的に研究したものです。国語科教育の分野はもちろん、文学研究分野でも評価されています。
 中学校の国語科教科書を「学習の手引き」に着目しながら批判的に検討していった『授業づくりのための新中学国語科教科書研究』全三巻(大西忠治・阿部昇編著)も、注目を浴びました。検討だけでなく、「学習の手引き」の代案を一つ一つの教材について具体的に提案しています。
 2000年発行の『科学的な「読み」の授業入門・文学作品編』(東洋館)は、それまでの読み研の研究活動を一冊に集約したものです。小中高の教材を具体的に提示しながら、具体的な指導過程を系統的に提案しています。
 そして、既に示した『国語授業の改革』シリーズ(学文社)です。2001年から毎年一冊ずつ、刊行されています。毎回、最新の課題を取り上げ、それを臨床的に検討・検証しています。

 第1号『国語科新教材の徹底分析』2001年
 第2号『国語科新教材のポイント発問』2002年
 第3号『この教材で基礎・基本としての言語スキルを身につける』2003年
 第4号『国語科の教科内容をデザインする』2004年
 第5号『国語科小学校・中学校 新教材の徹底研究と授業づくり』2005年
 第6号『確かな国語力を身につけさせるための授業づくり』2006年
 第7号『教材研究を国語の授業づくりにどう生かすか』2007年
 第8号『PISA型「読解力」を超える国語授業の新展開』2008年
 第9号『新学習指導要領をみすえた新しい国語授業の提案』2009年
 第10号『国語科の教科内容の系統性はなぜ100年間解明されなかったのか』2010年
 第11号『新しい教科書の新しい教材を生かして思考力・判断力・表現力を身につけさせる』2011年
 第12号『「言語活動」を生かして確かな「国語の力」を身につけさせる』2012年
 第13号『若い教師のための「言語活動」を生かした国語の授業・徹底入門』2013年
 第14号『授業で子どもに身につけたい「国語の力」』2014年
 第15号『国語科の「言語活動」を徹底追究する』2015年
 第16号『「アクティブ・ラーニング」を生かしたあたらしい「読み」の授業』2016年
 第17号『国語の授業で「主体的・対話的で深い学び」をどう実現するか』2017年

 読み研運営委員個人の著書については、枚挙に暇がありません。これは読み研通信等で適宜ご紹介いたします。
 

(5)読み研運営委員会

 読み研は、全国の多くの先生方に夏の大会、冬の研究会等に参加していただく形で研究活動を展開しています。その研究活動は、運営委員会が中心となって支えています。
 運営委員会の中に事務局があり、会の代表を阿部昇(秋田大学)が、事務局長を加藤郁夫(立命館小学校)が、事務局次長を高橋喜代治(成蹊大学)、臺野芳孝(千葉県海浜打瀬小学校)、永橋和行(立命館小学校)、鈴野高志(茗溪学園中学校・高等学校)が担当しています。
 読み研の研究活動を紹介するために『読み研通信』を年4回発行しています。夏の大会、冬の研究会に参加された先生方には一年間お送りしています。
 なお、さきほど紹介した『国語授業の改革』の編集は、柴田義松氏(東京大学名誉教授)(編集顧問)、阿部昇(編集委員長)、加藤郁夫、高橋喜代治、永橋和行(以上編集委員)が担当しています。
 全国に新しい読み研サークル、ないしは読み研を学ぶ会が、毎年誕生しています。ご連絡をいただければ、運営委員会から講師を派遣することもできます。


(6)読み研の研究活動の広がり

 国語科教育の多くの文献に「『読み』の授業研究会」が取り上げられることが、増えています。大槻和夫編『国語科重要用語300の基礎知識』(2001年、明治図書)、全国大学国語教育学会『国語科教育学研究の成果と展望』(2002年、明治図書)、田近洵一・井上尚美編『国語教育指導用語辞典・第三版』(2003年、教育出版)、柴田義松氏他編『あたらしい国語科指導法・四訂版』(2005年、学文社)、日本教育方法学会編『教育方法学研究ハンドブック』(2014年、学文社)、田中耕治編著『戦後日本教育方法論史』(2017年、ミネルヴァ書房)――など数多く取り上げられています。

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 すべての子どもたちに深く豊かな国語の力を確実に身につけさせるための方法を、今後、より切れ味よくより具体的に追究していきたいと考えています。読み研の研究活動にご期待ください。そして、是非ご参加ください。